遅れた日記・12 「カニ/買い物/夜更けのコンビニ」


2月21(木)


どんよりした気分。
買い物にも行けない日々に鬱屈している。

夕方、カメラマンのSが豪華なボイル蟹のセットを持って遊びに来てくれた。
この灰色の日々になんとも救われた気分。
荷物をおろすと車でスーパーへ連れて行ってくれて買い物。水菜、アスパラガス、木綿豆腐、しゃくし菜と茄子の漬物、玉子、酒 、そしておやつの菓子パンなど。清算の段になってSが今日のぶんは奢りだと言う。おお、なんともありがたいことだ!家へ帰るとまずビール。
先日の曽根さんもОもそうだがSも仕事の数が減り大変らしい。
まあ、今の時勢それほどの景気良さを語る友人はそれほどいないのだが。


カニ鍋をはじめる。
味はつけず醤油を少々に柚子を絞ってかける。蓋をはぐるとカニのいいにおいが湯気とともに立ち上る。カニの他は豆腐と水菜だけ。
旨いことに妙な形容はいらない。只々、旨い。ひたすら旨い。そして甲羅盛りのカニ味噌の旨さ。菊水の辛口が進む。


食宴が済むといつもの通りコンビニまでアイスクリームを買いに。今日は松葉杖しかも酔ってるのでかなり疲労する。
Sは心配してくれるが、少しは歩きたい。ついでに角ハイボールを買う。音楽を聴きながら話、時計を見るともう4時過ぎだ。
Sは相変わらず持参の寝袋。
就寝。



レストランロケット (20
★ 「レストラン・ロケット」(2006)

海沿いではないけど、深夜ゆくコンビニはこんな小道を通る。
黒い小道だ。





スポンサーサイト

遅れた日記・11 「アニエス/観葉植物/チーズオムレツ」


2月19日(火)


朝起きてコーヒーを飲んでると窓の外に粉雪が舞い始めた。億劫になり、病院は明日にする。
薬の服用のせいか近頃、目覚めるのが遅くなってしまった。「元春レディオショー」もエンディングだ。
見ると寒さのせいかドラセナが一部黄変してる。身の丈2mはあるやつだ。


仕事部屋へゆき描き始める。
制作は遅々として目に見える進捗のないまま5日、いやもう1週間は過ぎるだろう。個展まであと10点は仕上げなければならないのだが・・。現時点で7点の完成。たっぷりと時間をかけ、画面を5cm角の単位で刻むように丁寧な描き込みを心がけてる近頃。
そのせいかわりと気に入るものが揃ってきた。
だが新味が無い。



ドラセナ




フランスのジャーナリスト、アニエスから久しぶりのメールがきた。
彼女は日本語学校で学んでいる。メールも近頃は日本語だ。「相すみません」とか「風のうわさで」とか書いてある(笑)
いや笑えないなこの熱意は本当に敬服する。今年も3ヵ月日本に滞在するゆえ、また飲みましょうというメールだった。


買い物に行けないので冷凍、常温ともに備蓄が減り始めた。
仕事を終え、深夜、酒。
最後の玉子とパルメザンでチーズオムレツを作る。(これはピザ用チーズを使うよりチーズのコクが出てうまい)野菜は無いので仕方ない
塩蔵わかめで一品。酒はワインしかない。なんとか少しでもワインに合わせよう。
たまねぎオイル、ガーリックパウダー、タバスコ、化学調味料、醤油少々で味付け。・・・うまいのかまずいのか分からん。
ファドのCDをかけながら飲み始める。
猫が杖のにおいをクンクンしてる。
今まで何人を支えてきたんだろうか。この杖。



遅れた日記・10 「松葉杖/バーボン/電話」

 

2月15日(金)


整形外科へ行ったのがケガの翌日。左足の靭帯損傷。痛みは足裏を床につけられないほどだった。
この程度で済んだのは神様の御加護としか思えない。友人たちも医者もよくこの程度で済んだと言う。


ジャック
★ 「シャイニング」(1980)より。

 ジャック・トランスのような階段の落ちざまにならず心から良かったと思う。
 あのシーンはすごい。




 しかし人生初の松葉杖だ。
室内、しかも段差の多い我が家では使い辛いこと甚だしい。3日経つがもう痛みは無い。ギプスと湿布、内服のおかげで治りつつあるが、どこへも行けず日がな1日制作と読書の日々。久しぶりに餃子をつくる予定だったが買い物にゆけず断念。
昼には冷食のいかとたらこのスパゲッティ、バーボンのお湯割りを1杯飲む。

Pからお見舞いの電話がある。彼から電話というのは珍しいのだが、とても嬉しい。

夜、仕事をしてると曽根賢さんから電話があった。もうだいぶ酔ってるようだ。
しかし彼はあれだけの宿病を背負いながら実にタフだ。酒を飲んで階段から落ちてけがをしたことを言ったら笑われた。
しかも、それで死んだやつはたくさんいると、実に嬉しそうに言う。



遅れた日記・9 「水炊き / 階段 / コロナビール」

 

2月12日(火)


この日は午前中何したっけ?覚えてることだけ書こう。
制作を終えて夕方の特急で新宿へゆく。冬の夕方の外出というのはどこかわくわくする。


飴星
                            『飴星』  (2011)
 


GとPと3人で水炊きを食べた。
猥雑な繁華街に紛れるように古い日本家屋がある。ここは老舗の鶏料理専門店で鶏以外は野菜が僅かあるだけという潔さ。
7時半、時間通りにゆくと2階の座敷に通された。あれ?1階テーブル席で予約したのに。(昔の家屋なので急な勾配の階段だ)大座敷がふすまで仕切られ八畳ほどに卓が三つ。

ほどなくPが来た。そしてGが来た。
まずはビール。こういった座敷ではなぜか壜ビールがおいしい。
待望の鶏の刺身、たたき。口福。何も言うことは無い。続いて焼き物で若鶏、砂肝、レバー。そして水炊き。
ここは博多風の、鶏をじっくり煮込んだ白濁のスープで東京の一般的な「水炊き」ではないが、しつこい脂臭さはなく意外とあっさりとしたそれでいて鶏の上品な旨味が出てる。
料理も最高だが、この3人で囲む酒卓は毎度とても楽しい。

10時。
気がつくと他の客はおらず我々だけだ。卓の上の皿も全て空だ。さあ、帰ろう。G、Pともに先に階下へ。
ここで僕はうっかり階段に背を向け仲居さんに・・。
おいしかったですよ。特に鶏皮ポン酢がとっても・・。
みなさんそう言ってくださるんですよ、また、ぜ・・・
その瞬間、仲居さんが目の前から消えた。階段が高速で眼前を過ぎる。落下。咄嗟のなかでも後ろに倒れたらおしまいだと手摺にしがみつく。手が何本にも見えた。気づくと一階に到着。エスカレーターの5倍以上の早さだ。
見上げる階段は黒く暗い、ゆうに3メートル傾斜角45度くらいだ(笑)直立姿勢の着地だ。おお!店のひとも喜んでくれている!
けたたましい音にびっくりしてGが店に入ってきた。
良くぞ頭から真っ逆さまに転落しなかったものだ。

帰り道、足が痛いなあ。
一休みしてビールでも飲んでいくか。ということでハブでコロナを飲む。ハブは地下だ。無論、階段がある。
帰宅すると買い置きの湿布を足首に貼り、寝る。だんだん痛くなってきたぞ~。



遅れた日記・8 「新宿/シテール島への船出/石狩鍋」



2月9日(土)

外に出ると今日は意外と寒い。
しかし、近頃、冬って感じがしないなあ。寒いは寒いが2月という厳寒期であるはずの季節感がしないのはどうしてだろうか。


今日は曽根賢さんのところへゆく約束。
「レコード・コレクターズ」のライター、小峰さんを誘う。2時に待ち合わせるが肝心の曽根さんが電話に出ない。昨日は「バーストハイ」編集長の送別会だったのでまた呑みつぶれたか・・。
しばらくタリーズでお茶を飲みながら待つ。小峰さんが「シテール島への船出」の入ったエレニ・カラインドルーのCDを貸してくれようと持ってきてくれたのだが、残念ながらそれらの曲の収録されたものは持っていた。
(ありがとうね、小峰さん)




ガンディセ
★ 西牧家に住み着いて50年近くになる犬。名前はガンディセ。

  決して死なず、さらに歳を重ねる。




 ようやく曽根さんが電話に出たのだが事務所ではまだスタッフが仕事中というので近所の「紅とん」でしばらく呑む。
ガツぽん、ねぎ盛り、レバー、カシラ、ガツを頼む。紅とんはおいしい。しかし、今日の曽根さんは食がまったく進まない。


K社も景気は悪く、昨晩の飲み会は絶望的な話しばかりだったそうだ。
そんな話しのなか、小峰さんが鮮やかな藤色のカーディガンを着ていたのだが、なんと23万のものをオークションで3万で買ったというのには曽根さん共々驚いた。小峰さんは身に着けるもの、また買い物の仕方に確たる独自の流儀を持っており、それをぼくは素晴らしいと感じる。


事務所に行き、改めて呑む。
曽根さんが石狩鍋をつくってくれたが、曽根さん自身はからだのことで用心し殆ど箸をつけることなくふたりであらかた食べた。
これがとてもおいしいのだ。曽根さんのつくる料理はデザイナーの友人の大庭君のつくる料理にとても似ている。
小峰さん持参のCDを聞きながら酒宴の楽しい時間は流れ去り、帰る時間があっという間に来た。ご機嫌な曽根さんは帰り際、これを定例会にしようと言う。
ふたりで駅までの20分を急ぐ。


帰宅後、宝焼酎ハイボール(レモン)を飲みながら少し勉強する。
入浴。
猫とおやすみを言い合い、寝る。




随従性協調骨格筋と可変内骨格の相関図②


katalog.jpg
★ Stefan-Hoenerloh


想像上の建築物、市街を描く画家の中でも壮観な都市群を重厚な存在感で描き出す稀有な画家である。
冷え冷えとしたその高層建築群は黴臭く、音も無い廃墟感を漂わせつつも荘重ですらある。
日本にも野又穣という空想建築物を描く素晴らしい画家がいるが、その明るく発展的イメージの世界観とは対照的だ。


22_knarz.gif


以前、上海の紡績工場跡を歩いたことがあるのだが、ひとの気配も無く、過去の時代臭とでもいうべき独特の臭気のなか、闇に包まれつつあるその広大な敷地に立ち並ぶ建物を見上げたときこの画家を思い出した。



北極のラエムクーBar 【3】



クレメ

★ CLEMENTINE (バーボン)

クレメンタインでつくるジョン・コリンズは贅沢なおいしさ。

  クレメンタイン・・・・・・・・・・60ml
  レモンジュース・・・・・・・・・20ml
  シュガーシロップ・・・・・・・・2tsp(好みで)
  ソーダ・・・・・・・・・・・・・・・・適量 




1997年に永岡書店から出た「ザ・ベスト・バーボン」に紹介されていたバーボン。
この本で気になった銘柄は行ける範囲での東京の酒販店に出かけて探し、見つからないものは輸入会社に問い合わせて入手したものだったが、クレメンタインの輸入会社は重松貿易だった。初めて見つけた店がどこだったかは失念したが、その後、友人に頼んで吉祥寺のマツモトキヨシ、ダイヤ街店で3本買ってきてもらったのは覚えている。

その素晴らしい芳香となめらかな甘さはバーボンというよりはもはやブランデーに近い。50.5度という度数の高さを感じさせないまろやかな味わいはもう出来過ぎの感がある。ブランデーと同じく、香りを楽しみながらのストレートがいちばんおいしいが、いささか度外れているとは思えど、熱いお湯割りによって立ち上る香気は他の酒では味わい難いものだと思う。
この時はビターチョコがその両者の味を一層豊かなものにする感じだ。



遅れた日記・7 「金燕酒家」



2月7日(木)


新年会というには遅いが、とにかくこのメンバーでの会食は本年初めて。
ライブペインティングやトークショー、展覧会で世話になったヤスダアートの三島太郎氏、アトリエサードの社長、鈴木孝さん、そして人形作家の森馨さん。
4人で新宿の金燕酒家に集まる。ここは四川料理の店。花山椒、唐辛子のほどよい辛味の旨い料理を出す店だ。
(以前横浜の料理屋では山椒が強烈で箸は進まなかった)

新宿には早めについたので少し歩いてみようと思う。
花園神社。
唐獅子に黙礼をし鳥居をくぐると、整然とした夜の境内がひろがる。決して綺麗とは言えない雑然紛然たる繁華街すぐ横に、こんな清清しい空間があることに毎度感心する。
ゴールデン街を抜けると一匹のキジ猫が「なんかない?おれ猫だけど」といった感じで遊歩道を嗅ぎまわっていた。
うんこも落ちている。

小さな路地に入る。
ここはいつでも暗い。(すれ違いには肩触れ合うほどの狭さだ)ここには小体だが非常に旨い中国料理屋があるのだがなんという屋号だったか。見ると今夜は営業してるかどうかはわからない。





凜

★ 球体関節人形作家、森馨さんの創ったぬいぐるみ人形。

クマちゃん型ベビースーツからはみ出た前髪もキュートで素敵なぬいぐる子。
男の子に決め「凜」と名づけた。
後ろ手を組み、たまに何事かつぶやきながら小石を蹴ったりしつつ歩き回ってるようだ。





7時半。
金燕酒家に向かう。
鈴木、三島、森の順で席は揃った。
乾杯。

ピータン、くらげの冷菜、そしてガツのマーラーソース、よだれ鶏を頼み、西安の料理だというラムの串揚げ、そして油淋鶏、牛肉の四川風土鍋煮込み、イカと紫蘇の炒めもの、豆苗の炒めものを頼み、紹興酒を飲む。
オーダーをすべて列記したのは甲乙つけがたいおいしさだったからだが、特にラム、土鍋煮込みは絶品だった。
皆、良く食べ料理の一片も残すことはなかった。
(中国でどこかのお宅に食事を招待された場合にはすべてを食べきることはマナーに反するそうだけど、これだけおいしければ全部食べたいな。招待されないが。)

そのあと三島さんの知るバーでごちそうになる。電車の時間がせまったので3人を残し、人混みの新宿をあとにする。楽しい食事だった。
帰宅後は仕事を一時間ほど。入浴そしてトリスハイボールを一缶飲みながら勉強する。寝る。猫も寝る。



潜水艦の写真集を見て「いいね」とおじちゃんは言った。


リン

★ Mikel Rouse Brokenconsort  「A LINCOLN PORTRAIT」 (1988)


 90年代に「ニュージャズ」という、ジャズを基本に様々な音楽形態をミックスする音楽が出てきた。
この「リンカーン・ポートレイト」はまだそのことばが出る以前にリリースされたものだが、聴いたときの衝撃は相当なものだった。これこそジャズへの先鋭的なアプローチではないかとさえ「当時」思ったものだ。そう、ジャズ、ロック、現代音楽などのシチュー、前衛的なクロスオーバーとでも言うべきか。
 リンドラム、ドラムス、ソプラノサックス、キーボード、ベースなどの編成から繰り出される「音」は聴きなれない者をかき乱すかのようなリズム群でもあった。リンドラムとドラムスの交錯する複雑な変拍子は分裂、破綻一歩手前ともいえるが、極めてくっきりとしたタイトな音質のこのアルバム、録音はサウンド・エンジニアとして当時名を馳せたマーティン・ビシによるもので、このひとはビル・ラズウェルとセルロイドを立ち上げたひとだ。
インダストリアル・ロックの偉才、ジム・フィータスのアルバムなどもプロデュースした。



遅れた日記・6  「スピーカーケーブル / 書店 / タラの芽天麩羅」



2月2日(土)


2月というのにこの暖かさはどうだろう。
真冬が好きな自分としては良いことではない。洗濯物はよく乾くが・・。
糠床の手入れをし、きゅうりとキャベツを漬ける。明日の酒のためだ。
季節によって、またその日の気温によって漬かり時間が変わるので単純なようで糠漬けはむずかしい。
以前はアスパラ、じゃが芋、トマトなど変り種を漬けて楽しんでいたが最近は定番のきゅうり、大根、人参、蕪などがやはりいちばんうまい。

 本日は制作はお休み。
3時に友人のОと待ち合わせ。今年になって初めてふたりで飲む約束だ。
時間まで街を少し歩き、電気店でスピーカーケーブルを3メートル買う。
で、3時。
少々高いがおいしい珈琲屋で1時間ほど話す。Оは17年勤めたデザイン会社を辞め、ウェブデザインの学校に通いだした。
この歳で困難が付き纏う中、デザインという世界に執着する絶対的な向学心には頭が下がる思いだ。


 なじみのもつ焼き屋の4時開店と同時に飲み始める。
春菊の辛子和え、ガツ刺し、焼き物のレバー、シロ、シビレ(膵臓)、にんにく揚げ、ポテトサラダなどを頼み、ビール、ハイボール、日本酒を飲み、6時半頃書店へ行く。
料理書、コミックスの売り場をまわり、そして例のごとくインターバルとしてカフェで葉巻とコーヒー。
時計を見ると8時だ。いつもの寿司屋へ。
まず、ビールとタラの芽天麩羅を頼む。特別うまい揚げ方ではないにせよやはりビールに合う。
光り物を主に握りを十貫ほどと糠漬け、そして酒を二合。ポテトサラダがサービスで出た。
ここは気安くそして安くうまい。小ぶりの握りは酒の肴としては最高だ。
11時の電車に乗り帰宅。

本日は制作はしないつもりだったがやはり少し描く。一時間ほど。
ソファーを照らす照明器具をアフリカンマスク風に描き込む。
宝焼酎ハイボール(すだち)を一缶飲み、入浴、ベッドで読書、就寝。





かの子

★ 「老妓抄」  岡本かの子

 収録されているなかでも「鮨」「家霊」「食魔」は何度読み返しても感慨無量の名篇だ。
志賀直哉は他人の文章を褒める時「目に見えるようだ」と評したそうだが、「鮨」の、茣蓙を敷いた縁側で鮨を握る母親
「家霊」の、冷たい籐畳にひとり座り、訥訥と語る徳永老人、「食魔」の、座敷でひとり酒宴をし、過去を振り返る鼈四郎の見つめる
暗い庭、そして降る霰・・・。
畳の冷たさを感じ、汁の煮出しの匂いとともにあがる湯気、夜の闇の濃さ、そういったものをまさに見るようだ。




ノワールの部屋の灯 <1>  『倫敦から来た男』 2007年/ハンガリー・ドイツ・フランス



ハンガリーの至宝とも言われるタル・ベーラ監督の手がけたこの作品は「暗い港を見下ろすガラス張りの制御室に勤務する鉄道員が目撃する殺人」に端を発する物語だ。
 冒頭からの長回しだが計算し尽くされた構図と、くっきりとしたコントラストのその美しいモノクロ映像は芸術映像と言え、飽きない。
どのカットをとっても絵画的完成度が高い隙の無い映画だ。(隙が無い故に目を放せず、若干堅苦しい感も否めないが)
沈黙と音楽の対比もまた絶妙だが、音楽の挿入に監督自身の自己陶酔が少々感じられるのは致し方ないことか。
物語自体はシンプルで特別凝ったところはない。
が、渋さの滲み出る白と黒の映像美に見惚れてしまう138分だった。




倫敦





長回しと言えばまず、昨年亡くなったテオ・アンゲロプロスであることは周知のことだが、使われる音楽もまた美しいのが両監督の秀でた特徴だ。
アンゲロプロスの幾つかの作品の音楽はエレニ・カライドロウが担当しているが「シテール島への船出」の音楽は特に美しく、哀しく、物語を引き立たせている。
ギリシャでしか発売されなかったというサントラは手に入らなかったが「霧の中の風景」とのカップリングCDが手に入ったのは幸運だった。
サクソフォーン奏者、ヤン・ガルバレク(ts)の曲も入っている。



遅れた日記・5 「地下食品売り場 / 画廊 / 天狗」




2年ぶりにひいた風邪が早く治ったので約束を反故にせず済む。
今日はアトリエサード社長、鈴木孝さんと銀座の画廊をふたつ廻り、そのあと飲む約束。
伏せてた2日間干せなかった布団をベランダにかけると実に気持ち良い天気だ。いつも通り午前中制作。
2時半に家を出る。
 駅の百貨店地下食品売り場でクッキーを買う。(個展中の長谷川友美さんへのおみやげ)
平日休日問わずの混雑ぶりの食品売り場だ。小川洋子の小説「妊娠カレンダー」にもあったが、これだけのひとが食べ物を求めて集まってくるということにあらためて驚く。(僕もそのひとりなのだが・・)


 画廊にて。
長谷川さんは制作が早い。本人曰く、それだけ作業してるからとのことだがとにかく驚きだ。
作品はゆるやかな時間が音もなく静かに流れるといった印象の、夜の絵が多かった。いつもの彼女の絵とは一味違う百合の作品が目を惹いた。
(珈琲をごちそうさまでした)


 遅れてきた鈴木さんとヴァニラ画廊へ向かう。
「林良文展」。
目の当たりにするその凄まじいまでの筆致は他の鉛筆作家を寄せ付けず、狂気ともいえるエロス群が画廊を濃密な空間にしている。
執念と極度の集中に支えられたその圧倒的作業量に気圧される。
今回特に瞠目したのは、僅か一ミリほどのハイライトだ。それを初め白抜きとは思えなかった。まるでそう見えないのだ。
それは点描きされた白絵の具の盛り上がりにしか見えない。

パリからいらした御本人が在廊されていたので小1時間ほど色々お話しを伺えた。
ギーガー、シビル・リュペール、プメロ・・・。先生御自身がアイドルと言う画家は僕も好きな画家だった。
しかし・・、小柄な方だがその鍛え上げられた肉体がまた凄い。ゆったりとしたセーターの上からもはっきりと分かるその発達した大胸筋の盛り上がりに驚いた。(今日はよく驚く日だ)





P1010575.gif

★ 林良文 『脳髄を懐胎したある唯物論者の花嫁』 (トレヴィル)

林良文氏初めての画集となる本書だがその密度、内容共に僕が出会ったことのない驚異的な異世界が展開されていた。
今もって当時のその衝撃を凌ぐものは無い。
当時のトレヴィル編集長である金田太郎氏(故人)が林氏に会って5分で画集化を提案したというのも頷ける。





 その後、鈴木さんと銀座にできたテング酒場へゆく。ふたりで入るのは2度目。ここは安くてうまい。
店内の風情とその値段の安さは銀座とは思えない感じだ。
もつ煮豆腐、サイコロステーキ、鰤刺身、山芋わさび漬け、などを頼む。
近況、画廊のこと、映画、今度の飲み会のことなど話題は尽きない。楽しく飲むが時間は滝のように過ぎる。もう、10時半だ。
回り道をして鈴木さんが僕の駅まで付き合ってくれる。
帰宅後1時間ほど仕事。ハイボールを一缶飲み。入浴、就寝。

福鯨丸鮨店深夜の味わい。


鮨

★ 英語訳付き 寿司ガイドブック (池田書店)

握りの切り身の瑞々しい照りがとても美しい。
鮨の写真集としても充分楽しめる手元に置いておくだけでうれしい一冊。




食べ物を描くのは難しい。
食べ物の写真もそうだろうと思うが、とりわけ「生もの」の写真を撮るのは難しいんじゃないだろうか。
しかしこの本はその難しい「生もの」である鮨が実に実においしそうだ!もう、そこにあるかのような鮨!
外国人向けのガイドブックであると同時、日本語表記なので知らなかった鮨についてのあれこれも分かり、日本人も楽しく味わえる一冊。
うれしいのは鮨ネタ(40種以上!)だけではなく鮨屋で出される肴や汁物も美味写真で味わえる。
プロフィール

kiemqu

Author:kiemqu
西牧徹/黒戯画世界

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR