遅れた日記・16  「ネクタイ/弾丸タクシー/酒の大七」



3月27日(水)



親戚の通夜ということで福島へゆく。何十年ぶりだろう。
新幹線→郡山。
到着。
駅前なんかは東京と変わりは無いなあ。駅前に限らずどこへ行っても殆どがその地方ならではの風情は薄くなって画一的景観だ。

家を出る時、黒ネクタイが見当たらなかったため、ホテルにチェックインしたあと隣の「うすい百貨店」で買い、その場でしめる。
売り場のかわいい店員さんの、ほのかな福島弁を聞いて当時のことが懐かしく思い起こされる。



カピ

☆ 「ぼくはどうすればいいんでしょう」と聞く猫は先生のところへ預ける。




時間が迫り駅に急いだが失敗。
ローカル線ゆえ、なんと1時間に一本という列車を乗り逃がした。ばかか。さあ、困ったぞ。次まで待ったら通夜の時間には大幅に遅れる。タクシー乗り場へゆき通夜に急ぐむねを伝え、料金と時間を聞くと安い小型タクシーを呼んでくれ、なんと料金も安くしてくれる。


タクシーは街中を抜けると大変なスピードになり始めた。
雨が降り始め、それは次第にフロントグラスを叩く大きな雨粒になってきた。しかもそんな中、先行車との距離はわずか3mくらいだ!
メーターは60㌔、70,80,60.70と、60よりおちるのは信号前後だけだ。
右に左に小刻みに蛇行する濡れ光る細い山道をタクシーは突進し、あがるしぶきも只事じゃないぞ。
通夜のための持参の数珠を握り締めたが手はもう汗まみれだ。


ぐったりで到着。自分の通夜にならず済んだ。驚くべきことに遅刻はわずか十五分程度。信じられぬ。
この運転手はもともとこうなのか、それとも通夜のはなしを聞いていつもより飛ばしてくれたのか。これは正直判らなかった(笑)
深く礼を言い下車。


数十年ぶりで出迎えてくれた親戚一同は厚く歓待してくれた。
香典と手土産を渡し、焼香を済ませると酒席に案内してくれたが歩きながら小遣いをくれる。辞退するまもなく喪服のポケットにねじ込まれた。年寄りの勧めはありがたく受け取るもんだとの言葉。
その後本家へ向かい再び焼香を済ませ親父の兄貴(御歳88歳。米寿だ)と話しをする。達者だ。しかもかけてるメガネが何だか妙にかっこいい。ここでも固辞するまもなく喪服のポケットにねじ込まれる。有無を言わさないのだ。


郡山まで車で送ってくれるという。これも強く遠慮したが有無を言わせないのだ。子供の頃会ったきりで時間も記憶も止まり、ここ福島では俺は永遠の子供なのか。通夜に出席し、逆に世話になってしまった。


さて、深夜の郡山。
適当に探した居酒屋に入る。ひとり酒。
カウンターの端、気楽な席に案内された。そこここで福島弁が飛び交ってる。
相当喋ったのでノドが渇いた。ビール。やれやれ、ようやくひとりになれたか。懐かしい親族とはいえ、数十年の隔たりがあるうえ通夜の場は気詰まりだ。そこで思い出した「ねじ込まれたもの」をポケットから出す。・・・・まずい、香典よりはるかに多いぞ。
まあいいや。帰ったら何か送ろう。
さて、肴を頼もう。まず、カマンベールの燻製。うまい!軽くまぶしてあるのは甘エビの卵か?お通しは白身魚の南蛮漬け。
桜刺し、炙り明太子を頼む。桜刺しは赤身と霜降りが盛られて来た。
この旨い肉刺しで焼酎を3杯飲み、約2時間のひとり酒盛りを終え、店を出る。


コンビニでハイボールを買うと、福島の酒「大七」ワンカップ箱入り(この酒のワンカップ箱入りとは珍しい)というのがあったので帰宅後、親父の仏壇に供えるために買う。(自分のも)
ホテルに戻ると時計は1時半。部屋で飲んで寝る。一抹の寂しさ。
寂しいし怖いのでスタンドの灯はつけて寝る。





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遅れた日記・15 「月蝕の骨/練り消し/目白会」



キエムクー・スタイル

        「キエムクー・スタイル」 (2006)






大阪「乙画廊」での個展がほぼ決まった。予定だと今年2013年8月。
以前、グループ展に参加した画廊だが、大阪では個展を開いたことはないので嬉しいし楽しみだ。
(旧作展だが、全作品大幅な加筆を施し、その後の状態での展示は初めてとなる)


午前中仕事。
難航していた作品のうち、ひとつがようやく完成した。ここから「寝かし」その後の細かな加筆や修正を施す作業が楽しい。今日は「目白会」(曽根さんの提案で、この飲み会に名をつけようということでその日に三人で決めた仮称だが)なので午後から都内に出る。今後の作業のため、画材屋で練り消しを買う。小峰さんとは三時半に待ち合わせ、お茶を飲む。


4時。曽根、小峰、西牧でモツ焼き屋で乾杯。今日はあたたかなので店の外にあるドラム缶で始める。焼き物とポテトサラダ、そして塩辛をならべる。
1時間ほどで店内に移動。結局河岸を変えることなく6時間半K屋で飲み続けた。こんなことはそうそう無い。普通は2、3軒は行くから。新しい定宿も決まり、さらに奇跡が起きたという曽根さんは終止ご機嫌。まあ、いつもタフであかるいひとではあるが。


足が万全ではないためタクシーで帰宅。途中コンビニで明日のぶんも含め買い物。猫のトイレの掃除をし、午前の仕事を少々続行する。床に着き、眠りに入る寸前まで新たな作品のことを考える。
鳥のイメージ。梟の骨格。ガス灯。朝靄。ソファー。螺旋階段。・・・・・・・・。






遅れた日記・14  「日本橋 / インターフォン / 苺酒」



3月12日(火)


3、4度めだというのにどうにも迷ってしまう大伝馬町の「みうらじろうギャラリー」。
道すがら迷いついでにドトールで一休みするが、なんとも煙たい店だ。煙エスプレッソを一杯飲み、早々に出る。
みうらさんのギャラリーは明るく清潔感のある白いギャラリー。本日、正式に来年2014年12月の個展が決定した。
みうらさん、ありがとうございます。
今年12月、ヴァニラでの個展では架空のカフェをモチーフにしたものにするが、みうらじろうギャラリーでは「鉄道」を主軸に据えて制作しようと思う。


キエムクーの苺2

                キエムクーの苺 (2006) 



6時半に池袋でアトリエサードの鈴木さんと待ち合わせの約束。今日は寒い。天気予報はおおきくはずれた。春の軽装できたが、仕方なく冴えない色のブルゾンを仕方なく買いその場で仕方なく羽織る。(なんだか昔の京浜東北線のような色だ)その後暖かなジュンク堂で本を探す。岩波文庫のコルタサルを買う。


鈴木さんと向かう今日の鶏料理屋は少々高級な店だ。店に看板は無く、扉すらも隠されている。客はインターフォンで来店を告げるのだ。1,2階は個室で予約優先のため3階に通される。
む、階段。
前回のけがのこともあり身構えてしまう。よりによって今回の階段はあの忌まわしい階段よりも遥かに長く、険しい。峻峰を仰ぎ見るかのようだ・・・。


無事、3階に登頂。奥の間の座敷に通された。先客はおらず席も良い。羽身、砂肝の刺身、きびなご天麩羅を頼む。お通しには初鰹たたき、田芋の素揚げそして食前酒として苺酒が出た。(高い店だがこのお通しで500円は安い)きびなごは普通。刺身は旨かったが、どちらかと言えば例の新宿「階段の店」のほうが旨い。
しかし高額ゆえ長居はできないので河岸を変える。無事、下山し「紅とん」へ。いやあ、この店は開放的だ。楽だ。しかも階段もない。しかも安く旨い。ガツ、レバーを焼いてもらい、にんにく鍋、ネギ盛り、鶏のたたきを頼む。結局、終電だ。


帰宅後、温めの湯に軽く漬かりマッサージとストレッチをする。湿布を貼り一息つく。
よく冷えた宝焼酎ハイボール(すだち)を一缶飲み。(うまい!) 猫に夜食を出し、1時間ほど仕事。
寝る。猫も寝る。




北極のラエムクーBar 【4】



イエローローズ

★ ザ・イエロー・ローズ・オブ・テキサス


4,8,12.15年と4種の製品が出ているが、いちばんリーズナブルかつ幅広い食べ物に合うのはこの4年ものだ。
香りも高くやはりストレートかロックで飲むのがうまい。この「テキサス美人」いつごろからか4年、8年のラベルが変わった。以前の4年は灰黒色だったが、今はこの通り、薔薇の黄色も映える鮮やかなブルー・ラベルだ。

バーボンを飲むときは料理に悩むけれど、酒飲みが家で飲むときはあるものを何でも食べて満足しなければいけない。とはいえ、スーパーに行けば、アスパラとソーセージをオリーブオイルとバターで炒めて・・・とか、じゃが芋と厚く切ったベーコンを炒めて・・・とか、鶏肉をトマトソースで煮込んで・・・とか考えるのは楽しい。
曽根さん(元、バースト編集長)が作ってくれたソーセージとセロリの炒め物はうまかったなあ。





武装するエロス・2 「ラテックス」



あつこ1
☆ Atsuko Kudo 'Restricted Love'


ロンドンを拠点とするラテックスファッションブランド「atsuko-kudo」のショー。
ラテックスにこだわった美しく艶やかな製品展開を追求しているブランド。ここまでファッショナブルになると逆にエロスからはいささか遠ざかってしまう感もあるが、ボディ・コンシャス・スタイルとしては最高にセクシーであり、上品で豊富な色調に繊細なアンティーク・プリントはとても美しい。



あつこ2


あつこ3


あつこ4


ボディーラインに密着する艶やかな光沢、透明感そして色彩。
官能的綺羅の様々登場するこのショーには目を奪われる。




随従性協調骨格筋と可変内骨格の相関図・③



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★ Gerard DI-MACCIO



フランスのみならず幻想絵画の世界の泰斗と言うべき画家。
1988年に初めて日本で紹介されたこの画家は若き頃、教員免許を取得するために美術史、解剖学、透視図法などを学び、美術の技巧は無論のこと、建築学、幾何学、形態心理学など非常に幅広い学問的追及をし作品に生かしている。「デッサンをまともにできない画家」に批判的であり否定的な見解さえも持つが、ディマシオの描く迫真的な肉体像の芸術性はまさにルネサンスの巨匠に匹敵する。また、大変、精力的な制作活動をしており過去には3×10.5mの作品、近年には9×27mという驚異的な大作壁画を完成させ、これは20世紀における個人製作の壁画としては最大とされている。


その作品の傾向からスイスの画家H・Rギーガーとの類似性を指摘されることもあるというが「ギーガーとは全く関係なく制作してきた」とは本人の言。指摘される類似性とはおそらく人体の異質なものとの癒着をモチーフのひとつとしてる点だろう。その異質なものとしてギーガーはメカニズムを好み、ディマシオはその対極にあるオルガニズムを選んだのだろうというのが個人的な偶感。
なお、ディマシオの作品にはタイトルは無い。あるのはナンバーのみだ。



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68 <油彩>  1987



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22 <油彩>  1983





遅れた日記・13 「秩父/サンフランシスコ号/蕎麦」


3月7日(木)

カメラマンのSから電話があり、秩父へ行く。
3月になるやいなや日増しに気温は上がってくるが、秩父へ着くとこちらは肌寒さがやや残っている。秩父へ来たのは蕎麦屋が目当てなのだが、殆どの店が早仕舞いのため、駅前の観光案内所で夜の営業のある店を探してもらう。

秩父駅の仲見世のはずれにある、とってつけたような幼児遊具の一角がなんとも物寂しい。ひっそりとひしめく電動木馬のひとつに「サンフランシスコ号」はある。額をぶつけつつサンフランシスコ号に乗船するとSがカメラのシャッターを押した。

うらぶれた商店街を抜け、歩くこと15分、目当ての店に到着した。佇まいに覚えがあり懐かしく思い出したこの店は、数年前友人のОと来た店だった。民芸風の店内はさほど広くはないが天井が高く居心地がいい。陽も暮れはじめたこの時間、我々のほかに客はいない。まず、ビールの大瓶をひとつとり待望の一杯をSとともに飲み干す。うまい。天麩羅盛り合わせ、そばこんにゃく(こんにゃくを蕎麦に見立てたもの)山菜を頼み、酒は秩父錦(辛口の本醸造)そしてせいろ。天麩羅はいかにも蕎麦屋の天麩羅で、揚げたて熱々サックリ、言う事の無い旨さだった。

帰りの特急まで仲見世の畳席で待つ。スーパーで買ったハイボールを飲みながら。つまみはくるみ。
土産屋は全て仕舞い、行き交うひとはおらず。
家に着くとさっきの食事はどこへやらで、すっかり空腹だ。前回Sが持ってきてくれたカニセットを冷凍庫から出し、秩父でのおみやげ「秩父錦」を呑みながらふたりでカニ鍋をする。

例により夜ふけてコンビニまでアイスクリームを買いに。
道中暗い小道脇の山林は今や伐採され、底抜けたような黒く荒涼とした空間になっている。





飛行機みたいに (2009
☆ 「飛行機みたいに」(2009)




「月の夢をみたよ・・・」と昼寝からさめたおじちゃんは言った。


地下鉄

☆ 白石民夫 / 地下鉄 「Subway in NY・Live」



白石民夫については、80年代アンダーグラウンドのアルトサックス奏者、路上ライブというイメージしかないが、この「地下鉄」は清水靖晃の「チェロ・スイーツ」(倉庫を改造したスタジオ、採石場などで収録した)を初めて聴いたときに似た昂ぶりを味わった。

タイトル通りニューヨークの地下鉄構内でのソロパフォーマンスで、その残響を生かし、サックスと構内をひとつの楽器たらしめた効果が素晴らしい。すなわち、地下鉄の通過、扉の開閉、金属の軋み・・・これらが劇的な要素として孤峰の サックスの音色と渾然となり、奇妙な美しさを醸してるのだ。



martine



martine.gif

☆ 『マルティーヌのおかいもの』

フランスのジャーナリスト、アニエス・ジアールが日本に遊びに来た時
おみやげとして数冊プレゼントしてくれたなかの一冊。




マルティーヌというかわいい少女が登場するシリーズもののフランスの絵本。
本書の絵を描くのはマルセル=マルリエという画家だが、そのやわらかで繊細な描画もさることながらその彩色の美しいこと。
かわいい少女が主人公の絵本はピエール・プロブストの「カロリーヌ・シリーズ」がフランスでのもうひとつのベストセラーだが
(カロリーヌはコミカルな要素を多分に含んだおもしろさ。)
長年愛され続けているこのふたつは画家としての優れた技巧に裏打ちされた名画による優れた絵本だということ。




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西牧徹/黒戯画世界

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