音楽をかけたまま、おじちゃんは消えた。

 

猫の名前はカピタン。2歳になるうちの猫だ。Aの住まいの近所から我が家へ連れて来て二年になる。
Aの家へ行ったある日、ドアを開けた彼女が言うには僕のあとをついてきた猫だと言う。気づかなかったが足元に
猫がいる。
Aも僕も猫が好きではあるが、すぐさま家に入れなどしなかった。猫は閉じられたドアの外で鳴き、裏へまわって
鳴き、やがてどこかへ帰って行った。二日後Aと旅行から帰り、まもなく猫の声。二日間我々の戻るのを待って
いたのだろうか・・・。
 翌日、日も暮れた田んぼのあぜ道をAとふたり、カゴと餌を買いに行った。一晩動こうとしなかった猫を僕は家へ連れて行く事に決めたからだ。
 雨上がりの空に渦巻く灰色の雲に車のヘッドライトが乱反射する、そんな晩だった事を覚えてる。 
そのカピタンが猫としては稀な椎間板ヘルニアになり、快癒した話しを少し遡った日記として書く事にする。



カピタン


11月29日(木)

  日本獣医生命科学大学出身で病院の副院長であるI氏。猫の病気が判明した昨日、このまだ若い先生が言ったことでおおいに迷う。犬の椎間板手術の経験は数十とあるが猫は初めてだと言うのだ。
「失礼は重々承知で聞きますが、お任せして大丈夫ですか」←(失礼だが聞かずにはおれぬ正直な気持ち)
「犬と猫の構造的、組織的な違いはありません。あるのは脂肪の厚さ、骨の太さなどで手術自体に問題はありません。しかし、ご心配であるなら経験ある医師をご紹介することもできます」
だが、そうなればまた予約、遠方への移動・・・、時間の経過によるカピタンのからだのリスクは大きくなる。
それらを考え、信じて任せることにする。


11月30日(金)

  11月も終わりというのに何とも暖かな日。カピタンの手術は2時に始まる。その間、家に帰る気もせずフードコートでコーヒーとサンドイッチの軽食をとるとKの美容室に行きカットをしてもらう。
3時すぎ、I先生より電話。手術は無事終了とのこと。
病院。ケージに入れられたカピタン。手首には点滴針、鼻には細いチューブ、首にはカラー。包帯を巻かれた動かない半身を引き摺る痛ましいさまに、つい涙が出る。3日も経てば軽い歩行ができるようになるとのI先生のことばがにわかには信じられない。
 夜、カメラマンのSが心配して来てくれる。今、ここで気に病んでも仕方が無い。久々に和室に座卓を出し、酒を飲みながら鶏鍋をする。Sは「遅くなったけど」と言って誕生日祝いにドリップポットをプレゼントしてくれた。
一通りの酒を済ませた深夜、近所のコンビニまでアイスクリームを食べに行く。道中行き交うひともいない小さな林道、茶畑を越えてゆく夜の黒い道だ。戻ると偉丈夫のSは毎度持参の寝袋にもぐり込むとたちどころに寝入ってしまう。いつもより静かな部屋、床につく。猫を想いながら。


12月2日(日)

  先日行って来た鬼王神社のお守りをカピに持ってゆく。
顔を合わせると、連れ帰るようせがまれるのは目に見えてるので、モニターを通して様子を見る。
動かない。じっと座ったままだ。まあ、それはそうだろう。
I先生の話しでは運動機能は序所に回復、向上してると聞き、少し安心する。


12月13日(木)

  カピタンの退院の日。
若干、まだ脚は引き摺るものの、家に着き、かごから出すとあちこち歩き回り始める。しばらくはケージ暮らしだがやがて本来の調子を取り戻すだろうとのI先生のことば。お金はかかったが、かけがえの無い友の思った以上の回復に喜ぶ。 
 
 ※ このあと約5日ほどで軽く走れるようになり、今現在(12月30日)には走ったり跳んだりもできるようになった。鬼王神社へも年明け早々お礼参りに行こうと思う。I先生はもちろんの事、今回の事で色々お世話になった友人たちの、GとS、N子さん。本当にありがとう。
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西牧徹/黒戯画世界

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